子連れシンデレラ(1)~最初で最後の恋~
黒沼さんは私達を再びホテルに車で案内する。

湾岸線道路のETCレーンのクロスバーで一旦減速し、そのままカードで通過していく。

「ママ!!今ETCレーン通ったよ!!凄いよ。ママ」

「・・・玲也、黙って乗ってなさい」

「別に構わないですよ・・・阿川さん」

「でも・・・」

「いいから・・・」
黒沼さんも柊也さんと同じで玲也には優しかった。

******

「此処でお待ち下さい・・・」

「あ、はい・・・」

黒沼さんは私達を柊也さんのプライベートルームに案内してくれた。

「飲み物もお菓子もキッチンに置いていますので、ご自由に飲食してください。
私は社長の元に戻ります・・・」
黒沼さんは社長室に戻って行った。



「ママ・・・凄いよ…この部屋・・・」

玲也は柊也さんの住む部屋を探検するかのように一人で歩き回る。

「おとなしくしなさい!!玲也」

「だって・・・楽しいだもん・・・」

探検が終わったのかと思えば、今度はフカフカのソファでジャピングをし始めた。
男の子はジッとしていない。ジッとしているのは寝る時だけ。
こんな時、パパが居ればと思うコトは何度もあった。


「こらっ!!玲也!!!」

「凛香はそうやって・・・玲也君のコトを怒るんだな・・・」

「!!?」

社長室に居るはずの柊也さんが入って来た。

「しゃちょうだ!?」

「玲也・・・元気だったか?」

「うん・・・今日ね・・・僕ね・・・給食全部食べたんだよ!!」

「それは偉いな・・・」

ソファでジャンプしていた玲也を柊也さんが抱っこした。

「ソファは座る所だ。
ジャンプしたら、ダメだ・・・怪我するぞ。玲也」

「わかった・・・しゃちょうの言うコト訊く・・・」

「素直でいい子だ。
でも、ママの言うコトも訊いてやれ。
君のコトを一番大切に思ってるのはママだからな・・・」

「うん・・・」
柊也さんは玲也を下ろした。
玲也は大人しくソファに座り、保育園で貰った絵本を一人で読み始めた。


「お仕事は?」

「君と玲也君の顔を見に来ただけだ・・・直ぐに帰るよ…そうだ夕食は玲也君の好きなお寿司だから・・・期待していてくれ」

「柊也さん・・・ありがとう」

「玲也君の喜ぶ顔が見たいだけだ・・・」

柊也さんは私を抱き寄せ、頬に軽くキスをした。

「玲也君が居るし、唇のキスは我慢するよ・・・じゃあな。凛香」



< 78 / 119 >

この作品をシェア

pagetop