すれちがいの婚約者 ~政略結婚、相手と知らずに恋をしました~
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「ユナ様って、可愛らしい方ですね」

「…そうですか?」

貴女の方がよっぽど可愛いですけどと言い出しそうになりながら、苦笑いを浮かべる。

「最初はキリッとしてカッコいい印象だったので」

何度目かの王太子妃とのお茶会で、彼女と話すのにはだいぶ慣れてきた。

「黙っていると…とはよく言われたものです」

タヤカウ国の公女らしく振る舞うとして、見本として思い出すは姉たちの姿。

凛として媚びない堂々とした態度。

別の角度から見るとそれは人を見下した不遜な態度ではあるだろうけど、あの国では王族のそれが当たり前で許されている。

人前では大国の公女として見えるように振舞っていたが、やはり幾度となく会って親しくなってくると本来の性格が出てしまう。

「キーマ様が出かけられて会えなくて淋しいんじゃなくて?」

「いえ、いつも忙しそうで殆ど会えていませんから」

「そうなの?」

「はい」

「カーゼ様も予算会議の前だから忙しくしているけど…もしかしてキーマ様に仕事を押し付けて
いるのかもしれない…」

「えぇ?」

「資料や書類作成など苦手だから」

ちょっと考えながら言い放つ言葉に、答える声があった。

「押し付けるとは人聞きが悪いなぁ」

「あら、カーゼ様」

後ろから気配なく現れたのは王太子のカーゼだ。
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