すれちがいの婚約者 ~政略結婚、相手と知らずに恋をしました~
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「王太子殿下、ヨウネ妃にはお世話になっております」

席から立ちあがり挨拶を交わす。

「いや、こちらこそ十分なおもてなしができなくて済まないな」

「皆様がお忙しい所、私だけがゆっくりさせて頂いて恐縮です」

「あまり表に出ていないが、キーマにはいろんな仕事や対応を任せているから、申し訳なく思う」

「…私が忙しさを理由に避けられていないのであれば、それで…」

思わず呟いてしまった本音にハッとする。

「それはないから大丈夫だ」

「それはないから大丈夫よ」

慌てて否定する二人の声が重なってちょっとびっくりする。

「キーマ様からユナ様の好みを聞かれたので、お茶会でいろんな果実に興味を持っていらしたとお教えしましたのよ」

「キーマの侍従達からも、仕事量を減らせと苦情がきてたな…」

「それは叶えて差し上げてください」

二人のやり取りに思わず笑みがこぼれる。

先日の果実の贈り物も、そんな情報から贈ってくれたものなんだと、いろいろ考えてくれているのだと嬉しく思う。

待っていて、いいのかな。

待っていれば、いいのかな。

待つだけで、いいのかな。

不安が完全に晴れることは無いけれど、二人の穏やかな笑顔が大丈夫と背中を押してくれる。

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