あの夏、君と。〜もう一度笑って〜


一学期遅れて、僕は今日、このクラスのクラスメイトとなった。


「はじめまして。竹中 翔です。よろしくお願いします。」

先生に促されて、自己紹介をした。


「竹中君は、1番後ろの窓際の席ね!では、ホームルーム終わります!1時限目の準備しててね〜」

そう言って、教室を出ていった。

担任の佐藤 理恵 先生は、優しそうで穏やかな印象。


僕は自分の席へと行って、とりあえず座った。


「竹中君、よろしくね!うちは隣の席の山梨 みちるって言います!」


ショートヘアで太陽に焼けた小麦色の肌。


「よ、よろしく……!」


ヘラっと笑い、挨拶を交わす。


「俺、笹川 幸宏(ゆきひろ)!ゆきって呼んで!」


前の席の男子もクルッと振り返り、挨拶をしてくれた。

ゆきは、The スポーツ少年って感じな印象だ。

短髪にガタイのいい体。そして健康的な小麦肌。笑うと白い歯が輝きそうな笑顔。

ここで男子は心強い……!

心の中でガッツポーズ。


「よろしく!僕のことは翔でも竹中でも好きに呼んで欲しい」


その後、何人か僕の席の周りに集まり、みんなそれぞれ名前を教えてくれた。


ここのクラスの人達みんな優しい……!!!


「ねぇ、ゆき、時間ある時でいいから、校内案内して欲しいんだけど、いいかな??」


「おう!いいぞ!昼休みん時な!」


「ありがとう」




キーンコーンカーンコーン……



昼休みのチャイムが鳴る。



「さてと、行くか!翔!」

席から立ち、教室を出ようとした時、


「きゃ〜!!!」

黄色ともピンクとも言えるような悲鳴が聞こえた。


「?」


芸能人でも来てるのか……?


隣のクラスの女子何人かが、僕もゆきの周りに集まる。


「竹中君ですか……?!」


「う、うん、そうだけど……」


みちるとは違い、色白でぐるんぐるんな巻き髪。

うっすらとメイクをして、バッシバシなまつ毛。


今どき風な女の子だ……。


「かっこいい〜!!!」

その女子達は僕を見て、キャッキャしてたのか……。


この時も改めて、恐るべしエミコと紗夜の助言&テクニック。と思った。


「翔、お前も大変だな〜」

ゆきが苦笑いで肩をポンと叩く。


お前も……???


「とりあえず、校内案内するから行くぞ!」

ゆきは女子達の間を縫って廊下へと出る。


「ま、待ってよ……!」


ゆきが通るとまたもやピンクの悲鳴。


「やばい……ゆき君に触っちゃった……!」


「めっちゃいい匂いしたよ〜!」


キャッキャとする女子を見て、なるほどって納得した。


まぁ、ゆきのルックスでモテないわけがないか……笑


女子の間を抜けてからもゆきはちょっぴりムスッとしていた。


僕は人生初めての経験なだけあって、悪い気はしなかったけど、これが日常茶飯事のゆきは不服そうだった。

「きっとこれが毎日だぜ?頑張れよな!翔」

励ましなのか、労りなのか……。


「きっとすぐ落ち着くって……!転校生って物珍しいからだよ!多分……??」


「だといいな、あ、ここが職員室で〜」


と、あちこち校内案内してもらい、何となく校舎内を覚えることが出来た。


「まぁ、移動教室とか一緒に行ってやるよ!安心しろ!」

「ゆき……!」

ニカッと笑うゆきの優しさにときめく。


ぼ、僕はBLじゃないぞ……!!!



「あ!忘れてた!」
そう言ってゆきは階段を駆け下り1階へ。


「ここ、保健室な!……失礼しまーす」


ドアをガラッと開け、保健室に入る。


「あら?笹川君と転校生の……!!」


開けてびっくり。そこには白衣を着たエミコ。


「翔、こちら保健室の先生の中原 エミコ先生!学校一、この村1番の美人だ!」


「ちょ、ちょっと何言ってるのよ……もう!」

エミコ……!エミコだ……!

照れくさそうにするエミコ。


「女子に囲まれてしんどくなったら、この保健室が避難所だと思え。この先生目の前にすると女子は子犬のように大人しくなるからな!」

「そ、そうなんだ……!わかったよ」


僕の頭はもうパニックだった。
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