あの夏、君と。〜もう一度笑って〜
そんな僕をよそに、
「ゆきく〜ん?翔く〜ん?どこ〜?」
僕達を探す女子の声が。
「あー。また違うやつが来たよ……。翔、お前スマホ持ってる?」
ゆきが肩を落としながら、僕に聞いてくる。
「?持ってるけど……」
「LINE!交換しよーぜ!とりあえず、今日あいつらに捕まったら貴重な昼休み潰れちまうから、俺が撒いといてやるから、大丈夫になったらLINEするから、様子みて保健室から出てこい!」
「そんなことしたら、ゆきの昼休みが……」
「今日は転校初日だから、今日だけだからな!」
ニッと笑うゆき。
「わかったよ、無理しないでね!」
そう言って、僕達はLINEを交換し、ゆきは保健室を後にした。
ゆきが保健室から出た瞬間、「いた〜!!」とピンクの悲鳴。
廊下をパタパタと走る音が静かになった頃。
「結構さまになってていいじゃない?翔」
エミコが話しかけてきた。
「え、エミコ、僕がこの学校に来ること知ってたんでしょ……」
「こーら、ここではエミコ先生!!まぁ、知ってたけど、翔の事驚かせたかったし??」
いたずらっ子のような笑みを浮かべるエミコ。
「もう……びっくりしたよ、ほんとに。まさか保健室の先生だったなんて……」
スマホを見ると、昼休みが終わる5分前だった。
「僕、もーそろ教室に戻るよ」
僕はドアに手をかけて、保健室を出ようとした。
「明日の昼休み、10分でいいから来てよ。待ってるから」
振り返ると余裕顔のエミコが足を組んで、僕を見ていた。
「絶対ね!」
「……わかったよ、じゃぁ、また明日」
そう言って、保健室を出た。
どうやら僕はエミコの「絶対」と言う言葉に弱いらしい……。
教室に戻るとぐったりしたゆきがいた。
「ゆ、ゆき……。大丈夫??」
「……」
「ゆき……??」
無言のゆき。なにかあったんだろうか。
「ゆき君、今学期初のもみくちゃにされて、ダウン中でーす」
みちるがケラケラ笑いながら説明してくれた。
「……夏……だぜ……?囲まれたら流石に暑いって…………。」
ゆきが重い口をやっと開いて発した言葉がこれ。
「……ご、ごめん……。」
「ま、自分で請け負ったしな!翔はなんも悪くねぇ!」
「気にすんな!」と笑顔で言ってくれるゆき。
これはモテても仕方ないな!!