あの夏、君と。〜もう一度笑って〜
気づくと、僕のワイシャツは全開。
僕の身体が露わになっていた。
ゆっくりとエミコが覆いかぶさってくる。
僕はもう為す術もなし。
されるがまま。
エミコの髪の先がサラサラと僕の身体を這う。
……くすぐったい……。
「……翔……」
エミコが僕の名前を呼ぶ。
「……いつか捨てるものは今捨てなきゃ……ね?♡」
舌なめずりをする色気をまとったエミコと目が合う。
え……!?今……!?
僕、今から童貞捨てちゃうの……!?!?
父さん、母さん、ばあちゃん、紗夜……!
ごめん……!
僕、16年間連れ添ってきた親友を捨てるらしい……!!
エミコの細い指が僕の身体を沿う。
ゾワゾワする……。
いいのか……!僕……!
こーゆーのって男側がリードするものじゃ……。
残念なことに、僕にはそーゆー知識が一切ない。
アダルトビデオもアダルトな本も見たことすらない。
エミコの顔が、僕の身体に近づく。
「……あっ……!」
舌が、エミコの舌が……!
「……可愛い……♡」
ボソッと呟くエミコ。
「……ま、待って……エミコ……!」
そして、エミコの舌は、僕の右乳首を捕えた。
チロチロと僕の右乳首をくすぐる。
た、勃っちゃうって〜!!!!
ブツン……。
次に目を開けると、保健室の天井が見えた……。
体を起こす。
服着てる……。
……夢……???
それとも僕はついに……!?!?
「あ、起きた?」
そこにはバリバリ仕事をこなすエミコがいた。
「エミコ……僕は……その……」
「……何よ、そんな顔しないでよ。あんた意外と上手いじゃない!激しいのに、気持ちよくてびっくりしちゃった……」
照れながら、そっぽ向くエミコ。
ま、まじ……か……。
記憶が飛んだと思ったけど、僕は……エミコを……!
まだ学校含めて3回しか会ってないのに……!
僕は勢いよく土下座をした。
「……ごめん!ごめんで済まされないけど、ちゃんと責任はとるから!!!!」
「……あははははは!!!!ひー!おかっしいー!!!!!!してないわよ!あんた途中でオーバーヒートして気絶したのよ!あはははは!そんなんじゃ童貞卒業なんて夢のまた夢ね!!」
お腹を抱えて、大爆笑なエミコ。
「……え!してないの!?」
「してないって!あー!おかしいー!!!」
「ひどいよ、エミコ……。僕はてっきり……子供でも出来たらって……」
半べそな僕。
「え?子供??」
「そーだよ!1回でも、え、エッチしちゃったら、子供できるんでしょ!」
顔を真っ赤にしながら、言った。
「……ぷっ!あーーーはっはっはっは!!1回で子供できるってあんたの精子、優秀過ぎ!!!避妊するのは普通でしょ!ゴム!コンドームって言うゴムつければ子供なんて出来ないわよ!」
こ、こんどーむ……???
そんな優秀なものが……!!!!
「……もう!僕はもう帰る!」
不貞腐れたような感じで、僕は保健室を出ようとした。
「もー!ごめんってば!」
グイッと引っ張られ、振り向かされた。
「謝ってもダメ!」
僕は今、すごく恥ずかしいんだから!
「……んー、なら、これで許して!!!」
「……んっ……!?」
え……??何が……???
僕の唇に、エミコの柔らかい唇が軽く……!?!?
「……また明日ね!」
「…………うん…………」
その後、どうやって家に帰ったか、覚えてない。
はっきりと分かるのは、
僕のファーストキスはエミコで、
僕は今日、初めて人とキスをした事だった。