あの夏、君と。〜もう一度笑って〜





祭り当日ー。



「ごめん!おまたせ!」


僕は少し遅れてゆきとみちるに合流した。



「おお!遅かったな!翔!…………って後ろの子は??」

ゆきが紗夜の存在に気づく。


「僕の……」


「初めまして!竹中 紗夜です!妹です!」


紗夜はしっかりと2人に挨拶をした。


「初めまして!山梨 みちるです!よろしくね!紗夜ちゃん!」

「笹川 幸宏!ゆきって呼んでな!!」


2人とも紗夜に良くしてくれた。


「あの……妹も一緒でいいかな……??」


「「もちろん!」」


「ありがとうございます!」

紗夜も嬉しそうだ。



そして、4人で祭りを色々と回った。



射的、出店、お化け屋敷……。


楽しい時間はあっという間に過ぎていく。



前後2人に別れて歩いていた。

前に僕とゆき。後ろからみちると紗夜。


「……翔、紗夜ちゃんすげー可愛いな!」


…………え?

「あ、あぁ、そう……??紗夜、可愛い……かな?」


思いっきりキョドってしまう。


これって良くない方向なのでは…………??


こういうフラグって回収されがちだよな……???


も、もし、ゆきのみちるに対しての好きって言うのは、幼なじみで感覚的には兄弟的なもので、姉か妹を他の男に盗られるのが嫌だなって言う気持ちだとしたら………………。


僕はなんてことをしてしまったんだろう……!!!!



確かに、紗夜は、母さんと父さんの良いとこ取りの顔立ち。


見慣れているせいで、紗夜がモテると言うことなど微塵も思いもしなかった!!!


……みちる!ごめん……!!


僕の頭の中は、『や、ら、か、し、た』でいっぱい。



「あ!可愛い!」

紗夜はいきなり射的の台に置いてある景品を指さした


そこには、花の髪飾り。


「あーゆーの好きなの??」

ゆきが紗夜に声掛けた。


ああ!もうダメな気しかしない!!


後ろにチラッと目をやると、ちょっとしょんぼりしてるみちる。


「うん!綺麗で可愛いもの好きなの!」


「やりに行こうぜ!」

「うん!!」


似た者同士、気が合ってしまうのか……。

再来年には、紗夜も僕らと同じ高校に上がってくる。


みちるの顔を見ると心が痛む。


ゆきと紗夜は仲良く射的の方に行ってしまい、僕とみちるは取り残されてしまった。



「……あはは、ゆき君、きっと紗夜ちゃん好きなのかな……??」

今にも泣き出しそうなみちる。

「……ごめん……。僕が紗夜を連れてきたばかりに……」


少し歩いて、神社の階段に腰掛けた。


「充分に時間はあったのに、なんでもっと早く『好き』って言えなかったんだろ……」

涙ぐみながら、みちるが笑う。
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