あの夏、君と。〜もう一度笑って〜



今までになかった感情。


どう処理をすればいいんだろう。



ボーッとして、歩いていると気づくと海に着いていた。


月明かりに照らされた穏やかな黒い海。



波打つ音が心地よかった。




会いたい……。エミコ……。


海に来るとエミコがすごく恋しくなる……。






チャプン……



水面が跳ねる音。


目を向けると、月明かりの影になり、シルエットしか分からないが、女性の姿が見えた。


「〜♪」


!!

この声、あの時聴いた声だ!



透き通る綺麗な。




聞き覚えのある声。



僕は海の中をジャブジャブと歩いていた。



完全に下半身が海に浸かるまで進んだ。



そして、その女性に手を伸ばす。



女性の手に触れた。


女性はびっくりして、振り返る。


もう、誰かはわかっている。


「……エミコ。」




エミコは、僕を見て涙を流す。


「……どうしたの?エミコ」



エミコは僕に体を預けるように寄り添った。



「遅いよ……。……祥太郎……。」


祥……太郎……??


「エ、エミコ??」


祥太郎は父方のじいちゃんの名前だ。



「…!!あ、ごめん……翔……。私、間違えて……」


「エミコ……。僕のおじいちゃんと知り合いだったの??」

優しくエミコに問いかけた。


「…約束してたの。この人魚祭一緒に回るって……」


「祥太郎……おじいちゃんは、僕のお父さんが産まれたその5年後に持病の心臓病の発作で亡くなってる……。元々、お医者様にも長生きは難しいだろうって言われてて、26歳の時に亡くなってる。」


エミコは、顔を覆い泣き出した。



「だから……!だから言ったのに……!!どうして、死んでしまうことを選んでしまったの……!!」
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