あの夏、君と。〜もう一度笑って〜



エミコとおじいちゃんはどういう関係だったんだろう。

エミコは僕がおじいちゃんの孫ということを気づいていたのだろうか。




「教えて。エミコ。おじいちゃんとのこと……。」


エミコは顔を上げ、僕の顔を見つめた。




僕の頬にソッと手を添え、微笑んだ。



「……よく似てる。目元が。本当に……。」


懐かしむような瞳で。


「私は祥太郎とこの海で出会ったの……。」








90年前ーー……。



私はまだ5歳で、陸の世界に興味を持っていた。



お母様の目を盗んで、陸近くまで来た時。



『見ろよ!美奈子!魚たくさんいる!』

『祥ちゃん、海入るの……??』


そこには、同い年くらいの元気な男の子とちょっと気弱そうな女の子がいた。



楽しそう……。一緒に遊べたらいいのに……。



しばらくその2人を見ていた。


2人は海に入り、魚を追いかけていた。



『祥ちゃん!無理したらダメだよ!!』


『ほんとに美奈子は心配性だなぁ、平気だって!』


そう言ったのも束の間、祥ちゃんと呼ばれていた男の子は、海の中で苦しみ出した。


『祥ちゃん……!!誰か!助けて……!!祥ちゃんが……!!!』



“人間と関わってはダメ”


お母様の言葉が頭をよぎった。



だけど……!!


『……陸まで連れてく……!!』


ちゃんと喋れてるかな……??


私は、祥ちゃんを陸まで連れて行った。



『……美奈……子……』


何とか意識を保っている様子だった。


『すぐお医者様呼ぶからね……!祥ちゃん……!!』


泣きじゃくりながら美奈子と呼ばれていた女の子は立ち上がった。



美奈子の腕を掴み、


『大丈夫……。待ってて……。』


私はそう言って、祥ちゃんの胸の中心に口付けをした。

そして息を吹き込む。



祥ちゃんの呼吸が徐々に正常を取り戻す。
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