あの夏、君と。〜もう一度笑って〜
「夏休み明けからあの高校に行くの?」
ヒーヒー涙目でお腹を抱えながらエミコが聞いてきた。
「そ、そうだよ!……もう!そんな笑うなんて……!」
海から上がり、砂浜に腰掛けた。
エミコもTシャツの端を絞りながら砂浜に来た。
チラッとめくれ上がる服の下から、細いウエストが見え隠れする。
「せっかくなんだから、デビューしちゃいなよ!」
「え?でびゅー??」
なんの事だと首を傾げる僕。
「まずは、そのだっさいメガネ辞めなさいよね!田舎にだって薬局あるし、コンタクトくらい売ってるから!」
そう、僕は、世でいう言わゆるモブ男。
メガネに、もっさい髪。
無駄に伸びてしまった身長。
中学校の時のあだ名は「電柱」。
黒歴史だ……。
「コンタクト怖いし……。」
ビビる僕をよそに、エミコは僕のメガネを取り上げた。
目が3になっちゃう……!!
「翔、綺麗な二重で色素の薄い茶目でしょ?見せないとか勿体ないよ!」
「んー……。わかったよ……。変えるよ、コンタクトに……。」
「あとは、その髪!梳いて、ワックスつけたりして整えなさいよ!」
髪もやらないといけないのか……。
「明日、またここで待ってるから、明日までに髪とコンタクトしないと海に放り投げるからね!」
「明日!?せ、せめて3日後に……」
「んー、じゃぁ、明後日ね。わかった?」
エミコは意外と鬼だ。
僕はしぶしぶ「はい……」と言った。