あの夏、君と。〜もう一度笑って〜
最難関。
そう、この透明なコンタクトを自分で自分の目に入れなければならない。
生まれてこの方、コンタクトなんてしたことすらない。
エミコみたいな綺麗な子に言われたら、その通りすればちょっとはマシになるかも?という野心である。
指先にちょこんとコンタクトを置く。
鏡と向き合い、目をガン開き。
ゆっくりと近づくコンタクト。
入る……!あと……あと少しだ!
頑張れ!僕!
「お兄ちゃーーーん?」
あと少しというところでガチャリと自室のドアが開いた。
目をガン開き、コンタクトをいれようとする僕を見て一言。
「どうしたの、大丈夫?」
と怪訝そうな顔で。
「紗夜……何回も言ってると思うけど、開ける前に、ノックくらいしてよ。入っていいか聞いてから入るのが常識だよ」
「声掛けたんだけど!で、なんでコンタクト?」
「べ、別にいいだろ!メガネ卒業しよーと思って」
「ふーん?ま、私は芋臭いお兄ちゃんが少しでもマシになるのは大歓迎だけどね〜」
「芋って……。なんか用あってきたんじゃないの?」
とりあえず、コンタクトを保存液に戻した。
「あ!そうそう!明後日空けといてよね!」
「え?なんで?明後日は用事が……」
「用事??明後日、おじいちゃんの49日でしょ!」
あ……!49日……!
すっかり忘れてた!ごめんじいちゃん!
「お父さんもお母さんも翔は忘れてるから言っといてって伝言ね!」
「あー、ありがとう」
明後日、被ってるじゃん……。エミコとの約束に……。
明日、海に行ったらいるかな……?エミコ
「あと、コンタクト入れるならーー……。」
紗夜からコンタクトの入れ方を教えてもらい、1時間後
何とかコンタクトを入れれるようになった。
「お兄ちゃん!いいじゃん!似合うよ!髪、紗夜やったげる!」
紗夜は急いで、自室に戻り、すぐさまヘアセット用品を持ってきた。
僕、そんな似合ってる……??
自分では普通だなぁと思っていたけど……。
紗夜は手馴れた手つきで僕の髪をセットしていく。
10分後
「どう??!いいんじゃない??」