極上社長に初めてを奪われて、溺愛懐妊いたしました
ばっちり目が合った瞬間、千紘社長が立ち上がり、私へと近づいてきた。

私は、くるんと背中を向けて、彼から逃げるように歩き出す。


「待って、笹崎さん」


けれど、千紘社長に手首を掴まれて引き止められてしまった。


「俺から逃げないで」


ぎゅっと私の手首を掴む千紘社長の手はとても冷たくて、きっと長い間この場所で私を待ち続けていたのだろう。

特に今日は日中から風が強く、五月とはいえ夜は肌寒く感じるのに。

千紘社長は、この場所でずっと私の帰りを待っていたんだ。


「昨夜のこと、しっかりと話をさせてくれないか」


いつも通りの穏やかな口調ではあるものの、千紘社長の手は私の手を強く掴んで離さない。

そんな彼に、私は背中を向けたまま小さく頭を振った。
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