極上社長に初めてを奪われて、溺愛懐妊いたしました
「そっか。そうだったんだね」


私がさくらんぼを好きなのはお母さんに似たのかな。そう思ったら、心がほっこりと温かくなる。また、私の知らない母をひとつ知ることができた。


「おばあちゃん。ひとつ聞いてもいいかな」


祖母はあまり母の話をしたがらない。きっと、思い出して辛いからだろう。でも、なんとなく今なら聞けるような気がしたし、祖母も答えてくれるような気がした。


「お母さんが、私を妊娠していたときのことって覚えている?」

『ええ、もちろん。よく覚えているよ』


そう答えて、一呼吸置いてから祖母は再び口を開いた。


『突然、東京からふらっと帰ってきたからどうしたのかと思えば、お腹に赤ちゃんがいると打ち明けられて。あのときは驚いたわね。それに、事情があって相手の男性とは結婚できないけど、一人で産んで育てるって言い張るから』


きっと、私を身籠ったときの母にはいろんな葛藤があったはずだ。もちろん産まないという選択肢も頭に過ったはず。つい最近までの私のように……。
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