モブ転生のはずが、もふもふチートが開花して 溺愛されて困っています
 ……本来の小説のラストでは、エミリーはこのパーティーでマティアスと結ばれ、みんなから祝福されハッピーエンド。私とレジスは、そんなふたりを見守るだけだったというのに。
 
 大好きな小説のヒロインのこんな姿を見るのは胸が痛むが、今までエミリーにされたことを考えると、手を差し伸べる気にはならなかった。
 それに、ここで私がエミリーを甘やかしたら、エミリーはなにも成長しないとも思った。この屈辱を受け、エミリーがこれからどういう人間になるかは……エミリー自身にかかっている。

 ――そんなことより、私はレジスに会ったら聞きたいことがいっぱいあるんだったわ!

 私は体をレジスのほうに向き直し、真正面からレジスを見つめた。私の行動に気づいたのか、レジスも私を見下ろす形になる。

「ねぇレジス、今までどこに――」
「……それ、つけてくれたんだな。似合ってる」
「え? ……あ」

 レジスの視線の先を辿ると、クリスマスにレジスがくれた水色の髪飾りがあった。

「それに、ドレス姿のフィーナはすごく綺麗だ。これ以上、誰にも見せたくないくらいに」
「そんなこと……」

 さっきまでエミリーにあんな怖い顔をしていたのに、いきなりみんなの前で甘い言葉を浴びせられ、私は戸惑った。

「フィーナ、行こう」
「え!? ど、どこにっ!?」

 返事もせずに、レジスは私の手を引いて突然走り出した。
 たくさんの生徒たちの目に晒されながら、私とレジスはそのまま会場から走り去っていく。

 途中でドレスとヒールのせいで走りにくい私を、レジスがひょいっとお姫様抱っこしてきた。すぐ近くにあるレジスの顔にドキッとして目を閉じる。どこに行くかわからないまま、私はしばらくのあいだ、レジスに抱えられたままとなった。

 目的の場所に到着したのか、レジスがそっと私を降ろす。固い床とは違う、ふんわりとした感覚。目を開けると、見慣れた芝生が辺り一面に広がっている。

 ここは、昼休みにいつもレジスが来ていた場所だ。
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