ミスアンダスタンディング
「わーっ!!初めまして!萩野です!!」
「あっ、初めまして」
「やだー!可愛い!ペコってお辞儀するの可愛い!」
「てかてか聞いて萩野ちゃん、空大ってば彼女のこと“みぃ”って呼んでんだよ」
「マジですか!きゃはは!空大くん、かわいー!」
もう誰が何を言っているのか分からない。
頭パンクしそう…。
「あーもうマジでうるさい。もういいから、早く閉店作業しますよ」
“朋美さん”と“萩野ちゃん”の交互に視線を泳がしていると、少し苛立っているような空大の声が落ちてきた。
「えーもうちょっと話したい!」
「ダメ。二人とも声デカすぎて通報される」
「何それ、ウケるね」
「ウケませんから。朋美さんも、ほら早く」
空大は二人の腕を掴み、半ば引きずるようにズルズルとキッチンの方へと歩いていく。
見慣れたはずのその後ろ姿が、今はなぜか知らない人のように見えて。
チクリ、チクリ。
まるで心臓に針が刺さったみたいに痛くて。
「もうちょいで終わるから、近くのコンビニで待ってて」
ちらりと此方を振り返り、最後にそう言葉を残した空大に私は静かに頷いた。