ミスアンダスタンディング
――指定されたコンビニに空大が姿を現したのは、それから十数分後の事だった。
「なんかあった?」
「…え?」
暗く染まった夜道を二人で歩いていると、流れていた沈黙を空大が先に破った。
私の少し前を歩いていた空大は前を見つめたまま言葉を続ける。
「や、だって急に来るし…なんかあったのかと思うじゃん」
「……」
“何か”がないと、行っちゃいけないの?
そんな言葉が頭を過る。まるでこれじゃあ私が“面倒な女”だ。
「別に…何もないよ」
ただ、会いたかっただけ。
規則的に前へと進んでいる足元を見つめていると、はぁーっと長い溜め息が聞こえた。当然、空大が出した音だ。
「よりにもよってあの二人に見られるとか…最悪」
「……」
「今日見て分かったと思うけど、あの二人めちゃくちゃイジってくるんだよ」
はぁーっと、もう一度溜め息を零した空大の背中を見つめる。
空大があんな風に女の子にイジられてるところなんて想像もつかなかった。
それくらいあの二人とは仲が良いんだろう。距離が、近いんだろう。
チクリ、また心臓に針が刺さる。
「…私、行かない方が良かった?」
キツく握りしめた手が微かに震える。
「んー…、こんな遅い時間に出歩くのはやめてほしいかな」
「……」
“そんなことないよ”って、否定してほしかった。
「俺が会いにいくから、みぃは家で居て」
待ってても会いに来てくれなかったくせにって、そんな事を思ってしまう。
…ああ。
私、“面倒な女”に認定されちゃうかもしれない。