ミスアンダスタンディング
誰だよこんな時間に…。
つってもまだ昼だけど。
宅配便?俺、なんか頼んだっけ。それとも何かの勧誘か?
まぁどっちにしろ出る気はないけど。
――ピンポーン
しつけぇな…。
――ピンポンピンポンピンポンピンピンピン…
「っどんだけ押してんだよ!」
アホほど連打され出したそれにガバッと勢いよく身体を起こす。
こんな事をする奴はひとりしかいない。絶対、陽平だ。
ガシガシと頭を掻きながら渋々玄関へと向かう。その間も止む事なく鳴り続けるチャイムに、怒りが爆発しそうだった。
「お前うるっせえんだよ!何回も押してんじゃ――っ」
バンッとドアを開けると共に発した怒号は、目の前に佇む人物を見た瞬間にピタリと止まった。
ドアを開けた先にいたのは宅配便でも勧誘でも、はたまた陽平でもなく。
「…ご、ごめんなさい…」
泣きそうな顔で小さく謝る、未唯奈だった。
「…え…あ…、未唯奈…?」
さっきまでの勢いは何処へやら。見たら分かるだろと言われそうな事をしどろもどろになりながら問うた俺に、みぃはこくりと頷いた。
「うるさくしてごめんね。寝てるのかと思って…」
「あ、いや…全然。…全然平気…うん」
いきなり日本語が下手くそになって、視点も定まらなくなる。
いや、だって、まさかみぃが居るだなんて思いもしなかったし。
「……」
「……」
気まずい空気が流れる。
どうしよう。家に上がってもらった方がいいのか?いやでも部屋ん中、汚いし…。
「あの…」
あれこれと考えている俺の鼓膜をみぃの声が揺らす。久しぶりのその音色に、胸が詰まりそうだった。
「…映画、見に行きませんか」