秘密事項:同僚と勢いで結婚した

ベッドに2人で並んで寝る。つい最近の楽しみの一つでもある添い寝。
だけれど今宵は…。


「おやすみ」


一切私に触れようとしない。声はちょっと刺々しい。


「……怒ってる…?」

「怒ってないよ」

「嘘。背、向けたままでこっち向いてくれないし…。いつもなら…」

「いつもなら?」

「……………おやすみのキス…してくれるじゃん…」


広い背中に顔をすり寄せて、自分のものではない人の体温を感じる。こっち向け、と言わんばかりにしつこくスリスリすると、ゆっくり千智は寝返りを打った。


「そんなにイチャイチャしたいんだ?」


すごく意地悪な笑顔。でも嬉しそうで、ご満悦な様子に少し安心した。


「うん。したい。」

「じゃあ、俺をその気にさせてよ?」


軽い面倒臭さにも愛しく感じるから夫婦って不思議だと思う。

相槌を打たずに私は起き上がり、千智の寝巻きのスウェットを下方へグイグイ引っ張る。突然の私の行動に驚いて目を大きく開いた彼は、自分で『その気にさせて』と言ったツケが回ってきたのか、されるがまま状態だ。

自分はあたかもヤる気はないですよ、な雰囲気を醸し出してたくせに。触る前から彼のソレは元気で芯を持っている。さすがに今にもはち切れんばかり、というわけではないにしても…。

私は仕返しを試みた。


「……もう硬いね。」

「っ…李が脱がすからだろ…」

「……ふふっ」


無理に平然を装ったような声音は聞いていて加虐心を唆る。意外と私はドSなのかもしれない。


「……舐めるよ」

「待っ…んっ…」


中々普段やらせてくれないから、きっと私にここを舐めさせるのが嫌なんだと思う。でもお構いなしに私は実行した。

止めようと千智は上体を起こす。けれど何もせずにその場で静止するから、表情がすこぶる良く見えた。


(気持ちよさそう…)
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