秘密事項:同僚と勢いで結婚した
居間に通すと、早速みんなでお茶を飲み始めた。
「あれ、柚(ゆず)は?」
歳の離れた妹の姿を探すも見つからず、私は目の前にいた父に尋ねた。
「柚は確か祭りの手伝いに行くって言って出て行ったよ。」
「祭りって今日?」
「夜な。今は屋台準備してるところじゃないか?」
毎年、地元で開催されるお祭り。
決まってこの連休、7月の下旬に行われる。
「千智くんと言ってらっしゃいよ〜。2人で浴衣着てお祭り満喫…。昔、お父さんと一緒に花火見ながらイチャイチャして…」
「わわ!身内のそういう話聞きたくないから!」
「え〜」
私の母には羞恥心というものが何もないらしい。ため息をつきながら、私は目の前にあるお茶に手を伸ばした。
「お祭り…行くのどれくらいぶりだろう。」
ボソッと隣で穂高くんは言う。
かなり興味を示しているように見受けられた。
(…可愛いな)
童心に帰っている表情に、ふと私はそんな感想を抱いた。