秘密事項:同僚と勢いで結婚した
「行ってきます」
「気をつけて〜」
2人で夜道を歩くと、夏の風物詩とも言えるカランコロンという下駄の音が響いた。
粋に走らず品のある浴衣は紺色がベースでピンク、藤色の朝顔が咲いている。
かれこれ5年ほど前に購入したものだが、お気に入りの浴衣だ。
「可愛いよ」
「っ……ありがと…」
唐突に褒められると胸が擽ったくて、喉の奥がキュッと締まる。
お世辞かもしれない、なんて考えが浮かぶよりも先に、本心を伝えたくなった。
「……穂高くんも…似合ってる…」
「千智、だろ?」
そう言って、穂高くんは私の手を柔らかく握って歩幅を合わせて歩いてくれる。
我が夫ながら出来た人だ、と思った。