秘密事項:同僚と勢いで結婚した
屋台が立ち並ぶ神社に着くと、人がごった返していた。田舎と言えど、この地域で一番のお祭りゆえ、毎年人が密集する。
そんな中、真っ先に私は入り口付近にある焼きそばに目を奪われた。
「美味しそう…」
鼻をかすめるソースを焦がした香りに、食欲がかき立てられた。
「食い意地張ってる」
クスクスと笑う夫などお構いなし。
食べたいものを食べる!
それが私のお祭りポリシー(?)だ。
「李、かき氷食べる?」
「うん!」
私を甘やかすように穂高くんは食べ物を買い与える。
たこ焼きにベビーカステラ、綿飴にりんご飴。
「……明日、間違いなく太ってそう」
屋台の外れにあるベンチでたらふく屋台グルメを堪能したのち、私は一人ぼやいた。
「とか言いつつ、幸せそうな顔してるけど?」
「うん。幸せ。」
笑みが溢れるほどの多幸感に、私は夜空を仰いだ。
「暗くなってきたね。」
「ここから花火って観えるの?」
「うん。私と柚が見つけた穴場スポット! ちょっと木で隠れちゃうけど、人いないしゆったりできるから一番オススメ」
そういえば妹の柚には未だ会えてない。祭りが終わったら会いに行こう。
今回の帰省は2泊3日。焦らず、のんびり。
今は、この特等席で穂高くんとゆっくりしてたい気分だった。(きっと満腹のせいだけど。)
「あ…近くの方が良かった? 今から観覧席の方に…」
「ううん。ここでいいよ。っていうか『ここがいい』。」