秘密事項:同僚と勢いで結婚した

李side


「……何考えてんの…! むっむりむり…!」

「お母さんのご厚意に感謝だなー」


私の抵抗なんて聞こえていないみたいな対応を穂高くんはしていた。
言う言葉ひとつひとつが棒読みだし。


それに、きっと彼は聞いていた。


『峻くんとは入ってたじゃない?』


入ったけど、あれは婚約が決まって幸せの絶頂期で。


「……穂高くん…!無理だってば…!」

「峻さんとは入ったのに?」


拗ねてる。
間違いなくこの人は拗ねてます。


何とかして逃げ出す方法を考えていると、穂高くんは目の前でTシャツを躊躇いもなく脱ぎ出した。


「っ…」


露わになる引き締まった身体。普段、仕事と家事ばかりで運動している様子はなかったけれど、腹筋で程よくお腹は割れていて健康的な肉体だった。


「李、脱がないの?」

「えっ…」

「脱がせてあげようか?」


いつもと穂高くんの雰囲気が違う。
だから心臓は煩く騒ぎ出すし、頬に帯びた熱が冷める気配が一切ない。


彼の伸びた腕が私を抱きしめ、背後に回した手でワンピースの背中のファスナーに触れる。
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