秘密事項:同僚と勢いで結婚した
「……っ…穂高くん…待っ…」
私は軽く彼の胸をトントンと叩く。精一杯の抵抗も虚しく、ジジジッ…という音と共に締め付けが緩くなった。
下までファスナーをおろすと、今度はブラジャーのホックを彼は摘まむ。
「んっ…だめ…」
拒絶の言葉を口にするが、次の瞬間、片手で彼はホックを外した。
「っ……」
私は胸の前で服が脱げないようにするべく手を交差させ、ヘタリとその場に座り込む。
目の前にいる穂高くんは知らない人みたいな冷たい顔をしていた。恐怖心が私を包み込んだ頃、再び彼の手が伸びてきて私は強く目を瞑って身構えた。
「………」
「………」
だが、何が起こるわけでもなく…。
数秒の沈黙が訪れる。
それから次に聞こえてきたのは穂高くんのため息と、
「ごめん。」
という謝罪だった。
謝るなら最初からこんなことしないでよ。
喉の奥あたりまで上がってきた言葉は言わずに飲み込んだ。
「こんなことしたって…李は嫌がるだけなのにな。」
「………」
「嫉妬して、自分の気持ち無理やり押し付けて……ダサすぎ。」
クシャッと髪を掴み、もう一度彼はため息を吐く。
「……嫌な思いさせてごめん。」
なにそれ…。
穂高くんはTシャツをもう一度着直し、無言でいる私を置き去りにして脱衣所を出て行った。