秘密事項:同僚と勢いで結婚した
落ち着かせるように、私たちは別々でお風呂に入った。
一緒に入ったフリを親にして、怒涛のような1日の終わり。
私は一人、自分の寝床に指定された和室に行くと、目前の光景に目が点になった。
「………あ…」
和室に敷布団が2つ。
その片方には私が、もう片方はきっと今、父の晩酌に付き合っている穂高くんが眠るのだろう。
心休まる時間は実家にいる間、存在しないみたいだ。
気まずい思いをする前に、私は眠りにつこうと布団の中に入って目を瞑る。
けど、おかしなことに脳が冴えていて、目蓋は全く重たくない。
「……はぁ…」
きっと気にしてるんだ。
あたかも『何とも思ってませんよ』風に装っていても、そばにいる穂高くんを意識せずにはいられない。
星空の下でしたキスは嫌じゃなかった。
触れた手が心地良くて、私を見る眼差しが優しくて。
『葉山』
私を呼ぶ声は柔らかい。
元カレと別れた時は、これ以上大切に思える人なんて現れない、なんて思っていたのに。
思っていたのに…。