秘密事項:同僚と勢いで結婚した
タクシーの中でゆったりとシートに身を委ねていると、体温の高いしっかりとした手が私の手を包み込んだ。
何も言わずに静かな車内で、街灯の光の粒が横に流れるのを車窓から見つめている。
触れるか触れないかギリギリの距離で手の甲を指先がなぞるから擽ったくて手を引っ込めそうになった。
「………」
愛されている。と、思う。
指を絡めて握り合う頃には、私たちの住むマンションに着いていた。
エレベーターに乗り込むと目的階のボタンを押す。徐々に上昇していく四角い無機質な空間の中、耳元で穂高くんは囁く。
「……ごめん…待てそうにないかも…」
何を?
と、大きく跳ねた心臓を無視して問おうとした時。
「んっ…」
強く唇を重ねられた。