秘密事項:同僚と勢いで結婚した


《ガチャッ》

「葉山、晩ご飯さ」

「………」



人間って本当にビックリした時、窮地に追い立たされた時って声出ないんですね。





『着てみようかな』って思った時点でフラグのようなものだったのかもしれない。




ノックもせずに入ってきた夫は目を大きくさせている。数秒後、顔を真っ赤にして勢いよく顔を逸らした。




(あぁ、横顔格好いい。)




なんて現実逃避を始めたところで、穂高くんは背を向けて…。



驚くべき発言をした。



「………天使かと思った…」

「……………はい…?」



聴き間違えか?
驚きすぎて幻聴が聞こえたのか?



耳を疑うことしかできない私を嘲笑うかのように扇風機の壁が吹き、ネグリジェを揺らす。



「………え、待って。……葉山のこと好きすぎて幻覚見てる…? 昨日の夢の続き…?」

「………へ…?」



私の夫は頭のネジが外れたかのように言葉を口にする。パニック状態に陥り、耳まで紅潮させていた。


「…こっ…これはのっちゃんからのプレゼントで…」

「相田…? 誕生日の…?」

「そう…」


ずっと背を向けたままでいる穂高くんと会話する。心臓は忙しなく音を立てて、落ち着くことを知らない。


「……ごめん。今度からノックちゃんとする。っていうかもう出るから…」

「………うん…」

「ほんとごめん」


その反応だけで充分だ。


さっきまでのネガティブは何処にいってしまったんだろう。


穂高くんの慌てる姿と表情で、穂高くんも普通の男の人だという認識が色濃く私の胸に焼き付いた。
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