先生がいてくれるなら①【完】
「あとねー、孝哉が夏休み中ここに入り浸ってたのって、家庭の事情もあったみたいでねぇ」
「……あぁ、なるほど」
「あ、知ってるんだ?」
「えーと、お父様とあまり上手くいってないらしいって事と、弟さん達の事ぐらいですけど」
「そうねー。明莉ちゃんがそれ知ってて、なんか安心したわー。孝哉も人の子だったかぁ。お母さん泣きそう」
いや、お母さんってほど先生と年は離れてないですよね?
ユキさんは本当に少し涙目になってて、手で涙を拭っていた。
「明莉ちゃん、あの子の住んでるマンションに行った事ある?」
「はい、一回だけ」
「あー、あるんだー。あそこねぇ、家を出るための交換条件だったらしいんだよねぇ。医者の家系だから、医学部に行かないで家を出るんなら親が用意したマンションに住めって」