最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました~トツキトオカの切愛夫婦事情~
彼はざっくばらんな物言いをする人で、穏やかで優しいタイプではない。絶対にモテるはずなのに女性関係の噂も聞いたことがないし、おそらく女性に対してもシビアなのだと思う。

お見合いのときもそのイメージ通りだったのだけど、最初にそう断言されたからこそ、私も過度な期待はせずに割り切って結婚を承諾できた。

奇跡的に愛が生まれる可能性はなきにしもあらずだが、それは超ラッキーなことで、ただ彼と生活を共にしてみたいという好奇心が満たされればいいのだと。


一年の間に、夢のような結婚式もしたし、ほぼ毎日一緒に食事をした。仕事中は隙のない社長様のプライベートな緩い姿を堪能したり、会社では近寄りがたい雰囲気の彼がくだらない会話に付き合ってくれて笑い合ったりもした。

愛されなくても幸せを感じられたから、私は決して後悔していない。彼と過ごしたふたりきりの時間が、とても貴重でかけがえのないものだったのは確かだ。

ただ最後にひとつだけ、どうしても慧さんに頼みたいことがある。
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