独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する
その声や眼差しがあまりに色っぽいので、ナースたちまでそろって真っ赤になり、「ごちそうさまでした~!」と言い残し、食堂からバタバタと去っていった。
その後ろ姿を満足げに眺める彼だが、今のキスはさすがに不本意だ。
私は仕返しとばかりに、いまだ肩の上にのっている彼の手の甲を、ぎゅっとつねった。
「いてっ。……なにすんの」
「あのねえ、いくらなんでもやりすぎ!」
「いいじゃん、唇じゃないんだし」
「そういう問題じゃ――」
食堂の真ん中で言い合いをしていると、そばを通りかかった白衣の人物がすれ違いざまにボソッと呟く。
「おふたりさん、かなり目立ってるよ。痴話げんかはお家に帰ってからにしたら?」
聞き慣れたその声は蓮見先生のもので、ハッと我に返って周囲を見渡すと、確かに食堂中の視線を集めていた。
やってしまった……。穴があったら入りたい。
蓮見先生は静かになった私と純也に苦笑をこぼし、窓際のテーブルに向かって歩いていった。
そこには黒瀬さんの姿があり、蓮見先生の姿に気づくと、ふわりと笑顔になる。そして、ふたりは彼女が手作りしてきたらしい彩り豊かなお弁当を、仲良く食べ始めた。