独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する

 しどろもどろに答えながら、勝手に頬が熱くなってくる。

 他人事ならまだしも、自分のこととなると、こういう話は本当に苦手。

 男ばかりの家庭で育ったにもかかわらず、他の男性に対してはまったく免疫がないのだ。仕事中ははぜか平気なんだけど……。

 小田切先生はそんな私の顔を覗き、甘えた声で「ないの?」と問いかけてくる。彼の悪戯っぽい瞳と目が合うと、心臓がうるさいくらいに暴れた。

「あるわけないでしょう!」
「でも、一緒に暮らすんだよね? 耐えられるかなぁ。なにしろ俺って〝すっごく性欲強くて絶倫〟だからな~」

 その言葉で、ようやく彼の意図がわかった。

 これ、さっきの私の失言への仕返しだ……! 

「そ、その節は失礼しました。祖父が小田切先生に、夫婦生活についてお節介な助言をしようとしていたのでつい」
「いいよ別に、そんなことだろうと思ってた。ちなみにさ、さっきから愛花先生の反応見てて思ったんだけど……もしかして、処女?」

 サラッと露骨なことを聞かれて、じわじわ上昇していた顔の温度が一気に沸点に達して、湯気が出そうになった。

 処女。確かにそうだ。それのなにが悪いの?

 いつもの私なら簡単に言えるはずの言葉がのどに詰まって出てこず、真っ赤な顔で彼を睨みつけるしかない。

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