独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する
「小田切先生、もう帰っちゃうんですか……?」
俺は掴まれた腕をまじまじと見ながら、好きでない女に触れられるのはこうも不愉快なものだったかと、驚いていた。
とはいえ同じ職場の、仕事上世話になっているナースだ。冷たい態度を取るのは得策ではない。頭ではそうわかっているのに、得意の愛想笑いができなかった。
俺はナースの手をやんわりほどいて、そっけなく告げる。
「うん、ごめん。……早く奥さんの顔見たくて」
ナースの表情がわかりやすく曇ったが、俺は無視して歓迎会を抜け出した。
愛花先生に会いたい……が、彼女は今頃実家だ。慣れない酒を口にして、すでに眠くなっている頃かもしれない。だとしたら、電話やメッセージも迷惑か。
……っていうか、少し落ち着けよ、俺。
店を出た俺はタクシーを拾うと、行き先に自宅ではなく職場の病院を告げた。
今の精神状態で家に帰っても、愛花先生のことばかり考えてしまって、きっと眠れない。
一旦仕事でもして、冷静になろう。眠くなったら病院で寝てしまえばいい。
俺はそう思って、夜の小田切総合病院を目指したのだが――。