独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する
それから一週間。並木道の桜は徐々に開花し、満開ではないものの、病院前の通りは鮮やかな春の色に染まった。
病室の窓からも見えるその景色に心を和ませる患者さんも多く、とても穏やかな日々……と言いたいところだが、脳神経外科は今日も目が回るような忙しさだ。
朝は病棟回診。その後は外来の患者さんを診て、昼食は流し込むように五分で摂取。午後一で指導医の蓮見先生が執刀するオペの補助に入り、医局のミーティング、夕方の回診。
それが終わって、ちょっとだけ医局のソファに腰を落ち着けようかなと思った瞬間、同じく医局にいた小田切先生のPHSに、救命救急センターからコール。
交通事故による頭部外傷の緊急手術を要請され、『手伝って』と小田切先生に頼まれ、私もオペに参加した。
患者は一刻を争う重篤な状態にあり、少しの迷いも許されない。
しかし小田切先生は落ち着き払った様子で患者の頭を開き、手術用顕微鏡を覗きながらの繊細なオペを、少しの躊躇もなく進めていく。
私は間近で彼の補佐をしながら、その神業的な技術に圧倒されるばかりだった。