背中合わせからはじめましょう  ◇背中合わせの、その先に…… 更新◇
「はあ? 悪いのは私って事? あなただって、親に何も言えずに言いなりだったじゃない?」


「あの状況で、女一人追い出せるか? 普通、酔ってこんなところで寝ちまうか? もう少し、危機感持ったらどうなんだ?」


「危機感? あなたが言う? 世界中であなたが一番危険じゃない!」


「ああ。そうだよ。だから言ってんだろ!」


「だから、出て行くって言ってるのに、いちいち、詮索しないでくれます!」


 スーツケースを持ち上げ、玄関へと向きを変えた。


「出て行くのはいいが、あれはどうすりゃいいんだ?」


 彼が、指さす先には、私の水色の下着が気持ちよさそうに風に揺れていた。


 かぁーっ。
 洗濯物を干した事など忘れていた。


「うーっ。持っていくわよ」


 真っ赤になった顔を隠すようにスーツケースから手を離し、ベランダへと向かう。


「おい、まだ乾いてないだろ? 一端落ち着けよ」


 誰のせいで、イライラすると思っているのよ。


 窓に手をかけた私に、彼が近づいてくる気配を感じた。


 私は、咄嗟に目に入ったモップを持つと、クルリと向きを変え先端を彼の胸に突き出した。



 「お、おい! 危ないだろ」


 彼は、慌てて両手を上げた。


 「危機感を持てって言ったのは、あなたじゃない。これ以上近づいたら、本気で叩くわよ!」



「さすがに俺だって、こんな所でむやみに手を出したりはしないぞ」


「よく言うわよ! むやみに手を出したのは誰よ!」


 全く、あんな事をしておいて、どういう神経しているんだろうか。


「わかったよ。だから、落ち着け!」


 彼が、後ずさりながら離れて行く事を確認し、私もモップを持つ手を緩めた。
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