背中合わせからはじめましょう  ◇背中合わせの、その先に…… 更新◇
「ちょ、ちょっと!」

「おい!」

 彼と私は、同時に皆を追いかけようとしたが、私の手を誰かが掴んだ。
 振り向くと、そこにはお姉さんが、綺麗な笑みを向けていた。

 彼の方を見ると、康介さんが、逃げようとする彼を後ろから羽交い絞めにしている。


「皆さん、先に行って下さい」

 康介さんの言葉に、皆がドアから出て行く。


「パパ! ママ!」

 なぜか子供のように叫んでしまった。


 ママが私の方に戻って来た。

「良かったわね、美月。よい方に巡り合えて。くれぐれも粗相のないようにね。あまり抵抗しちゃダメよ。もういい大人なんだから……」

 母は私の耳元で囁くと、ほほ笑んで出て行ってしまった。

 「ええっ!」

 私は、母の背中に向かって叫んだ。



 最後に出て行こうとした、彼の父は、彼の元へ戻ってきた。

「悠麻、この状況で何もないのは失礼と言うものだ。我慢はしなくていい」

 耳打ちして行ったが、全部聞こえている。


 皆が出て行ってしまった。
 一体どういう事なのよ?

 自分の声が出てしまったと思うくらい、同時に彼が叫んでいた。

「どういう事だよ!」

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