背中合わせからはじめましょう  ◇背中合わせの、その先に…… 更新◇
「どう言う事って? 話の流れでこうなっただけだよ」

 康介さんは、涼し気な笑みを浮かべている。
 だんだんと、この人が悪魔に見えてきた。


「そんな流れあるわけないだろ? だいたい俺らは何も言ってない!」

「とりあえず座りましょう」

 お姉さんが、茫然としている私をソファーに座らせた。


「二泊三日で予約してある。明後日の十一時がチェックアウトだ、忘れないように」

「お、おい、明後日って? 俺だって仕事があるんだよ」


「そう言うと思ってね」

 お姉さんは、大きなバッグを開けた。
 中から、ノートパソコンとUSBが数本出てきた。


「おい、俺のパソコンじゃないか。いつの間に……」


「おじさんに聞いたら、これがあれば、急な仕事はなんとかなるって言っていたわ」


「何が話の流れだよ…… 計画的だろうが?」


 彼は、両手で頭を抱えてソファーに座った。



 私の頭の中には、計画的という言葉だけがグルグルまわり始めた。

 今、思い返せば、あまりに強引な見合いだった。
 もっと、ちゃんと断るべきだったと、今更後悔しても遅い……

 あまりにショックで下を向いた私の前に、何かが置かれた。

「お腹がすいたら、好きなもの頼んでいいからね」

「えっ?」

 豪華な茶色のカバーのファイルを開くと、そこには、和洋中の豪華な写真が並んでいた。ルームサービスのメニューらしい。さすが、ラグジュアリールームだ。
 思わず見入ってしまったが、そういう状況じゃない。


 すると、部屋の中が、一段明るくなった。
 ソファーの横にある、スタンドが灯ったのだ。


「美月さん、さっき案内したから大丈夫かな? この部屋好きに使っていいからね」


 康介さんが、優しく話かけて来た。
 その言葉に、ぐらっと胸が一瞬動く。薔薇のお風呂や、ふかふかベッドが頭を駆け巡る。
 こんな事で、私の心は動いてしまうなんて……

 向かいに座る彼を見るが、頭を抱えたままだ。



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