背中合わせからはじめましょう  ◇背中合わせの、その先に…… 更新◇
「は、早く……」


 彼女の言葉に、このままじゃ死んでしまうんじゃないかとさえ思った。

 俺は、動きにくくて邪魔なスーツの上着を脱ぎ棄てた。

 だが、帯など外した事がない。一番手前の紐を解いてみたが、帯は外れない。
 背中に縛られている帯は、どうやったらこんな結び方になるのか?聞いてみたいほど、拗れている。あちらこちらに手を突っ込み、なんとか揺るんだ帯をくるくる回し外していく。


 彼女も、少し息が出来てきたのか、自分で着物の衿を広げた。

「大丈夫か?」

 彼女に声をかける。

 だが彼女は、腰に巻かれたもう一本の紐を指さした。
 これが、一番の原因らしい。


「これか? わっ、なんでこんなに固く縛ってあるんだ?」


 しっかりと縛られた紐を解くのは簡単な事ではない。

 力なく横たえる彼女に、焦りしかなかった。


「取れた……」


 やっとの事で緩んだ結び目を解き、腰から紐を抜く。


「はあー」

 息を吐いた彼女に安堵する。


 彼女が、又、襟を広げた。


 その下にも、またある紐に彼女が手を伸ばした。
 これもかと、必死で紐を解く。

 
 解けたと同時に彼女が、また襟を広げた。

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