しかくかんけい!


ソロコンって。

大きな舞台の中心に立って、ピアノ伴奏を背景に悠々と綺麗な音を奏でる、あれだよ。


みんなで音を鳴らす合奏と違って、自分の音しか鳴らない。

少しの音程ミスもリズムの乱れも、ぜんぶぜんぶバレちゃうんだ。


だから、相当自信がなきゃ、そんな舞台に立てない。

憧れていたけど、私にはまだまだそんな。


「私、自信ないです……」


そう言って応募用紙を返そうとしたけど、部長はそれを遮った。


「そんなことない。あたしね、ハナちゃんってソロ向きだと思うわ。いつも合奏のときみんなの音を聴くようにしているんだけどね、なぜか、ハナちゃんの音はよく聴こえるの。何でかわからないけど、不思議と耳に入ってくるのよ」

「そ、そうなんですか……。私そんなにひどい音……」

「違う違う、いい意味で言ってるの」


部長が言うには、たとえ同じ楽器でも、奏でる人が違えば全く別の音になるらしい。

それは音の個性で、それこそ吹奏楽の面白いところなんだけど。



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