しかくかんけい!



「なに、……あ」


振り返るや否や、手を掴まれる。


「バカあほサイテー男っ!」

「……急にどうしたの、ハナ?」

「うわぁ、なんかめんどくさそぉだからまた今度ねぇ」

「あ、うん、ごめんね」


修羅場を悟ったらしい谷間女はそそくさとこの場を去る。

静かな廊下に取り残された、ハナと俺。


なに?

どうした?

なんで、泣きそうなの?

なんで、そんな声で鳴くの?


ただ見つめ合うだけの沈黙が流れる。


その流れを止めたのはやはりピッチの低い不快音(チャイム)で、はっと我にかえった彼女はひとつ瞬きして。



「あの…………ごっ、ごめんね!」


はい?

と間抜けな声が漏れたのは言うまでもない。


突然 罵ったと思ったら、次は突然 謝るって。


いくら俺でも理解に時間を要する。



「何が?」

「う、嘘ついて、ごめんなさいっ」

「……うそ?」



嘘って、いつどこで誰が?


とりあえず現在理解できることと言えば、今から本題が始まるってことね。

さっきの罵りは谷間女を追い払うためと解釈するよ。





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