花鎖に甘咬み



その指に、私の小指をきゅっと絡めた。

指切り、なんて子どもがするような不確かな口約束の儀式だけれど、これはそうじゃない。



お約束、なんて優しいものじゃなく、これは契約なのだと。

わざわざ説明されなくとも、わかる。


強く絡まった小指をじっと見つめて、真弓は目を細める。




「もう、離さない」




獰猛な光が真弓の瞳に宿る。
それこそ、ほんとうに“猛獣”のような。




「どんな悪夢を見ても行きつく先が地獄だとしても、離してやんねえ。俺の傍を離れるな、ずっと────お前の全てが尽きるまで」




ずいぶん大袈裟な物言いだと思う。

けれど、真弓が口にすると一気に現実味が帯びてくる。

肯定の返事の代わりに、きゅ、と一際強く、小指に力を込めると。




「……いい子だ」



そして、ゆっくりと小指が離れていく。
これで契約完了────かと思いきや。



「……っ!」



何の脈絡もなく、真弓の左手が後ろ首に回される。それで、ぐいと引き寄せられた、次の瞬間。



「〜〜〜っ、たぁ……っ!」



首すじに吐息、それから鋭い痛み。
とがった歯が柔く食いこむ感覚に、生理的な涙がにじんで、思わず悲鳴を上げてしまう。


噛みつかれたのだと、一呼吸おいて、わかった。
それはまるで、肉食動物に食べられるみたいに、がぶりと。




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