センチメンタル・ジャーニー ~彼を忘れるための一人旅

奏斗は カンナさんに 話したのかどうか。

少しの間 私といる時に 

カンナさんからの 電話はなかった。


3月の初め。寒さが残る 日曜の 昼頃。

前日 私の部屋に 泊まった奏斗と

遅めの 食事を 終えて。 

私達は 映画に行く 予定だった。


奏斗のスマホが鳴って 私は 奏斗を見る。

『もしもし…』

奏斗は すまなそうに 顔を伏せて 電話に出た。

『えっ?大丈夫か?うん…うん。熱は?えっ…うん。わかった。すぐ行くよ。』


キッチンで 食器を 片付けていた私は

振り返って 奏斗を 見つめた。


「葉月 ゴメン。カンナが 熱出したらしいんだ。薬買って来てほしいって言うから。俺 今から カンナの所に 行ってもいいかな?」

「はぁ?どうして奏斗が 行くの?親とか 友達は?病気なんでしょう?寝ているんでしょう?そんなところに いくら元カレだって 男の人 呼ぶ?」

「うん…親は 出かけてて つかまらないらしいんだ。すごく 辛そうだったからさ。一応 行ってみるよ。心配だからさ…」

すまなそうに 遠慮がちに言う 奏斗。

私は すごく頭にきて 笑顔になれなかった。


「そう。どうぞ。じゃあね。」

これ以上 話したら 嫌なことを 言ってしまいそうで。

私は 勢いよく 水道を流して 食器を洗い続けた。


「ごめん…後で 連絡するから。」

そう言って 奏斗は 部屋を出て行った。








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