センチメンタル・ジャーニー ~彼を忘れるための一人旅

その日 私は 部屋にいる気になれず

奏斗と 見る予定だった映画を 

1人で 見に行った。


気分が 滅入って イライラして。

せっかく 楽しみにしていた映画も

いまひとつ 集中できないまま。


でも 1人の部屋に 帰るのがイヤで。

家族連れで賑わう フードコートで 食事をして。


真っ暗になってから アパートに戻ると

ドアの前に 奏斗がいた。


「葉月…心配したよ。電話 繋がらないし…」

「奏斗。いつから いたの?」

「んっ?ずっと ここにいたわけじゃないよ。3時過ぎに カンナの部屋を出て。葉月に電話したけど 出ないから。ここに来てみたけど…葉月 やっぱりいないし。買い物かなって思って コンビニとか スーパー行ったけど。見つからないから。駅の方 探したりして。さっき 戻って来たけど。部屋 電気付いてないから…」


部屋に入って 奏斗の 言い訳を聞いて。

私を 探してくれたことは 嬉しかったけど。


カンナさんの部屋に 3時過ぎまで 居たんだ…


「奏斗と 見るはずだった映画 見て来たの…」

奏斗に コーヒーを淹れながら 私は言う。

「そうか…ゴメンな。デートできなくて。」

「うん。1人で ここにいるの 嫌だったから。」

「うん。ゴメン。」

奏斗は 私を 抱き締めた。


私は 一瞬 身体を硬くして 

奏斗の腕から 逃れる。

「どうしたの?葉月…怒ってる?」

「奏斗 カンナさんを 看病してたんでしょ?」


もしかして カンナさんのことも 抱き締めた?

そんな腕に 私は 抱かれたくない。


「カンナに 頼まれた物 買い物しただけだから。薬とか ポカリとか。カンナ 薬飲んで 寝るっていうから。俺 帰ってきたんだ。」

「ねぇ 奏斗…どうして 奏斗が カンナさんの 面倒みるの?私とのデート キャンセルしてまで?ねぇ 私 平気だと思う?奏斗だったら どう?奏斗とデート中に 私の 元カレから 電話があって 私が 看病に行っても 平気?」


「うん。ゴメン。葉月は 嫌だよな。ホントに ゴメン。俺 カンナに ちゃんと言うから。もう 俺を 頼るなって 言うからさ。ごめんな。」

そう言って 奏斗は 

もう一度 私を 抱き締めた。

「私 すごく寂しかったんだよ?奏斗に行かれて。1人で 映画見ても 何も 心に入らなかったんだよ?」

奏斗の腕の中 言いながら 私は 涙が溢れる。


「ゴメンな 葉月。俺が 悪かったよ。来週 もう一回 見に行こうな。」









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