やがて春が来るまでの、僕らの話。
「お腹空いたよー、早く行こう」
「うん、ごめんごめん」
やっぱりお弁当は陽菜と食べたい。
誘ってくれたのは本当に嬉しいけど、今日は断ろうと思ったとき。
「あ、よかったら陽菜も、一緒にお弁当食べない……?」
武田さんはどこか遠慮がちにそう言った。
私を誘ってくれた時みたいにじゃなくて、なんだか気を遣うように。
「どうする?武田さんたちと食べる?」
みんなで食べたら、陽菜も私ももっとクラスに溶け込めるかもしれない。
もっとみんなと仲良くなって、そしたらきっと何倍も楽しい学校生活になる。
そう、思ったのに……
私を見る陽菜は、とても悲しそうな顔をした。
「……やだ」
「え?」
「食べたいなら、ハナエだけ行けば」
「……」
陽菜、なにか怒ってる?
「他の子と仲良くしたいなら勝手にすれば!?」
「え、ちょっと、」
私の手にお弁当を無理矢理押し付けて、陽菜は廊下を走って行ってしまった。
なに?
私、何か悪いこと言った?
でもどうしよう、陽菜、すごく怒ってた……