やがて春が来るまでの、僕らの話。



「ごめん谷さん、私、余計なこと……」

「あ、ううん。武田さんはなにも悪くないから…」


わからない。

どうして陽菜が怒ったのか、わからない。


「ごめんね、私やっぱり陽菜とお弁当食べるね。ほんとごめんね!」



それからすぐ、資料室へ向けてダッシュした。

何か怒らせたなら謝りたいし、その理由を知りたいから。


角を二回曲がって一番奥にある資料室。


辿り着いたのは、トイレを出てから一分後だった。



部屋の中へ入ると、真っ直ぐ陽菜の元へ向かう。

座らずに立ったままの私を見て、柏木くんと若瀬くんが不思議そうな顔をしている。



「陽菜、どうして怒ってるの?」


ペッドボトルの蓋を開け、中身を飲んでまた蓋を閉める。

若瀬くんのその行動の間、陽菜からの返事はひとつもなかった。


「なに、ケンカ?」


答える気がないのか、陽菜だけはこっちを見ようともしない。


「言ってくれなきゃわかんないよ、私がなにかしたならちゃんと謝るから!」


そこまで言うと、陽菜はやっと口を開いた。

だけどそれは私にではなくて、若瀬くんたちに向けて。


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