やがて春が来るまでの、僕らの話。



「まぁ志月くんとかカッシーもいるし、多分大丈夫だろうとは思ってたんだけどね」

「うちらも別に陽菜のことが嫌いってわけではないんだけど、やっぱりまだ関わるのが難しいっていうか」


ウィンナーにフォークを刺したまま、私の手は止まっていた。

陽菜と関わるのが難しいって、どういうことだろう……


「あの、陽菜がみんなと馴染めてない理由って、妬まれてるからじゃないの?」

「え、妬まれてる?」


若瀬くんや柏木くん、それに倉田先輩とずっと一緒にいるから、それで妬まれているだけなのかと思ってたけど。

もしかして、もっと違う理由があるのかな。


「あー、幼馴染たちのこと?」

「うん」

「まぁ確かに、あいつらのことが好きな女子はいっぱいいるから、それも原因の一つにはなるんだろうけど」

「でもうちらみたいに、志月くんたちはただの友達ーって子もいっぱいいるしね」


そっか、よく考えればそうだよね。

いくら三人がモテるからって、みんながみんな好意を持っている訳じゃない。

じゃあ陽菜がみんなと馴染めていない原因って、なに?



「聞いてない?陽菜の家で起きた事件の話」

「事件……」



その言葉に思い出す。

倉田先輩も柏木くんも、絶対に口を開こうとしなかったあの話。


それが陽菜に関係あるの?


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