やがて春が来るまでの、僕らの話。



「うちらが小二の頃かな。陽菜の家にね、強盗が入ったの」

「強盗……って、お金を盗みに入る強盗?」

「うん……」

「割りと裕福な家だってこともあるし、両親は二人とも忙しく働いてるから、昼間は家を空けてることが多くてね」

「強盗が入った日も、家には誰もいなかったんだけど……でもしばらくして、帰ってきた陽菜のお姉ちゃんが鉢合わせになっちゃったの」

「え、うそ、危ない。それでどうしたの?」

「うん、それでそのあと……」



俯いた武田さんが、とても小さな声で言う。



「……陽菜のお姉ちゃん、死んじゃったの」


「え……」



届いた声は、私の思考全てを奪った。


だって今、なんて言った?

陽菜のお姉ちゃんが、死んじゃった?



「強盗と揉み合いなって、階段から落ちちゃって……それで、そのまま……」

「……そんな」

「お姉ちゃん、私たちの十個上でね。美人で優しくて頭もよくて、才色兼備って感じだった。こんな小さな町にあんなにきれいなお姉ちゃんがいるんだって、みんなの憧れだったの」

「あんなに優しかったお姉ちゃんがどうして死ななきゃいけなかったのか、この町の人はみんな現実を受け入れられなくて……」

「それは陽菜の両親も同じで、きっと自慢の娘だったから、陽菜の家はどんどん不安定になっていった」


不安定、って……

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