やがて春が来るまでの、僕らの話。


「お姉ちゃんが急にいなくなったこと、家族が壊れていくこと、その全部が陽菜の心をどんどん壊していったの……」

「なんでお姉ちゃんが、なんであの子がって、町の中や家の中から聞こえる声が、『陽菜が死ねばよかったのに』って聞こえるようになった。昔、陽菜がそう言ってた……」



うそだよ。だってそんなの全然想像できない。

陽菜、いつも楽しそうに笑ってるのに……



「誰かがお姉ちゃんの死を悲しむ度、その声は陽菜に、お前が代わりに死ねって言ってるように聞こえるんだって……」


「、…」



お弁当はもう食べる気になれなかった。

ウサギのりんごが悲しそうにこっちを見ている。



「だから今も、陽菜は病院に通い続けてて……」

「病院…?」

「心の病気って言うの?メンタルの、精神科…」


それは昔、お父さんも通っていた診療科名だ。


「昔はね、私たちも陽菜を励まそうと声を掛けたりしたんだけど」

「だけど突然泣き出したり暴れ出したり、陽菜の行動に着いていけなくて……」

「本とかネットとかで心の病気についてもみんなで調べたんだけど、中途半端な気持ちで優しくするのは余計相手を追い込むとか、一生を共にする覚悟がないなら距離を置くのが一番だとか書いてて」

「陽菜との接し方が、段々分からなくなってきたの。みんな……」

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