やがて春が来るまでの、僕らの話。



「随分早かったけど、どうやって帰ってきたの?」

「あ、杉内くんが家の前まで送ってくれたの」

「あー、どうりで」

「杉内くんすごいんだよ、お店の子たちにモテモテでね」

「まじ?」

「ちょっと喋ると女性陣からの視線がすごいの」

「怖っ」

「なんか昔のこと思い出しちゃった。若瀬くんと付き合ってた頃の、」


巻いていたマフラーを外しながら、あまりに自然に出た話題にハッとして、ハナエちゃんは言葉を止めた。


「……ごめ」


自然に出た言葉はやっぱりまだ彼女の胸を痛めるみたいで、少し悲しい空気が流れ出す。


「なんで謝るの?」

「……」



昔の話しをすることは、悪いことなんかじゃないのに。

だけどきっと、あいつらの存在はハナエちゃんにとって重たい鉛みたいになってるんだと思う。


重くて重くて重くて、だから心の真ん中から動いてくれない。

それって多分、裏を返せば重くて動かない程大きい存在ってことなんだろうけど。


7年間も心の真ん中にいる存在って、それはどう考えても誰よりも特別ってことになる。


不謹慎かもしれないけど、そこまで想われているあいつらが、ちょっと羨ましく感じたりした……

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