やがて春が来るまでの、僕らの話。


「だし?でじるってだしって読むの?」

「え、杉内くんまで」

「だってどう見てもでじるって書いてるじゃん」


大真面目に言う俺を見て、ハナエちゃんの肩がプルプル震えだす。


「……でじる……でじ、……ぷふーっ!」

「ちょっ、なにその笑い方!めっちゃバカにしてんだろ」

「だって、でじ、で、でじ、る、…、」


体を小刻みに震わせながら、ハナエちゃんはソファーをバシバシ叩いて笑ってる。


「ちょ、笑い過ぎだっつーの!」

「、だって…、、」

「3人中2人が読めないんだから、読み方変えた方がいいと思う!」

「……、、……っ、……」


ハナエちゃんは相当ツボに入ったようで、律くんが戻ってきた頃、やっと平常心を取り戻していた。

ちなみに律くんは当前のように『だし』って読んで、でじるって言い張る俺と南波くんを冷ややかな目で見た。



それからしばらくしてもつ鍋が届いて、お酒と共に箸も進む。

春に鍋ってのも珍しいけど、季節に関係なくやっぱりうまい。


「美味しいねぇ、でじる」

「うおい!」


わいわいと賑わっていて、今日はほんと楽しいな。


< 235 / 566 >

この作品をシェア

pagetop