やがて春が来るまでの、僕らの話。
「だし?でじるってだしって読むの?」
「え、杉内くんまで」
「だってどう見てもでじるって書いてるじゃん」
大真面目に言う俺を見て、ハナエちゃんの肩がプルプル震えだす。
「……でじる……でじ、……ぷふーっ!」
「ちょっ、なにその笑い方!めっちゃバカにしてんだろ」
「だって、でじ、で、でじ、る、…、」
体を小刻みに震わせながら、ハナエちゃんはソファーをバシバシ叩いて笑ってる。
「ちょ、笑い過ぎだっつーの!」
「、だって…、、」
「3人中2人が読めないんだから、読み方変えた方がいいと思う!」
「……、、……っ、……」
ハナエちゃんは相当ツボに入ったようで、律くんが戻ってきた頃、やっと平常心を取り戻していた。
ちなみに律くんは当前のように『だし』って読んで、でじるって言い張る俺と南波くんを冷ややかな目で見た。
それからしばらくしてもつ鍋が届いて、お酒と共に箸も進む。
春に鍋ってのも珍しいけど、季節に関係なくやっぱりうまい。
「美味しいねぇ、でじる」
「うおい!」
わいわいと賑わっていて、今日はほんと楽しいな。