やがて春が来るまでの、僕らの話。



「じゃあ移動ターイム!」


酔っ払いのハナエちゃんが自分のお酒を持って、俺の隣に移動を始めた。


……その時。


個室の入口から、誰かの声が聞こえてきて。

ドアの向こうだから顔は見えないけど、ボソボソと誰かが喋ってるのが聞こえてくる。


「ここ?」

「多分」

「多分って、違ったらどうすんだよ」

「だって律くん話し中で繋がんねぇんだもん」


聞こえた会話に、律くんではないことがわかった。


じゃあ、誰?


そんなことを考えてたら、ドアがゆっくり開けられて……

窺うように、1人の男が顔を出した。



その瞬間、



ガッシャーーン───!!



立っていたハナエちゃんの手から、グラスがスルリと落ちて床に散らばる。


大きな音と共に、無残に砕けた破片が俺の足元まで飛んできていた。

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