やがて春が来るまでの、僕らの話。
「とりあえず紹介しとく。俺の幼馴染の志月とカッシー。2人共今月からこっちに就職が決まって、今はこの街に住んでんの」
「え?」
南波くんたちに紹介したのに、一番に反応したのはやっぱりハナエちゃんだった。
その表情は当たり前に不安そう。
「……こっちに、住んでるの?」
「先月大学卒業して、志月は中学の先生、カッシーは営業マンとして働きだしたとこ」
そう説明したあと、志月がまた低い声で言葉を繋げる。
「で、先月の……陽菜の命日に律くんと会って、今度飲み会するから来いって」
「就職祝いしてやるからって聞かされてたんですけどね、俺らは」
「ごめん……いや、就職祝いには変わりないんだ。カッシーと志月と、それからハナエちゃんがそれぞれに働き出して。なにかお祝いしなきゃなって、3人が1番望んでるものってなんだろうって。それを考えたとき、この光景が浮かんだの。みんなでこうやって集まってる、この光景」